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東京地方裁判所 平成4年(行ウ)146号 判決

東京都江東区永代一丁目七番一四号

原告

有限会社永代製本所

右代表者取締役

畠山俊一

東京都江東区猿江二丁目一六番一二号

被告

江東西税務署長 石森宏宣

右指定代理人

津田真美

藤村泰雄

徳丸諭

倭文宣人

主文

一  本件訴えをいずれも却下する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一原告の請求の趣旨

被告が平成二年五月八日付けでした原告の昭和六一年六月一日から昭和六二年五月三一日までの事業年度の法人税の更正のうち所得金額一三一万四五四一円、納付すべき税額三九万四二〇〇円を超える部分、昭和六二年六月一日から昭和六三年五月三一日までの事業年度の法人税の更正のうち所得金額一六三万四五二七円、納付すべき税額四九万〇二〇〇円を超える部分及び昭和六三年六月一日から平成元年五月三一日までの事業年度の法人税の更正のうち所得金額一八二万六〇三六円、納付すべき税額五四万七八〇〇円を超える部分並びに各重加算税賦課決定を取り消す。

第二事案の概要

一  当事者間に争いがない事実等

1  原告は、その所在地である東京都江東区永代一丁目七番一四号で製本業を営む有限会社である。

2  原告の昭和六一年六月一日から平成元年五月三一日までの三年度分の事業年度についての申告及び課税並びにこれに対する不服申立て等の経緯は別表一ないし三のとおりである。

3  国税不服審判所長は別表一ないし三のとおり、平成四年五月一四日付けで、右各事業年度についての各更正及び各重加算税賦課決定に対する審査請求を棄却する裁決(以下「本件裁決」という。)をし、右裁決書謄本(以下「本件裁決書謄本」という。)は、同月一八日に原告の右所在地に送達された(乙一号証の二)ところ、原告は、同年八月一九日に本件訴えを提起した。

二  争点

行政事件訴訟法一四条一項及び四項は、本件のように審査請求があった場合における処分についての取消訴訟は、審査についての裁決があったことを知った日から起算して(すなわち、この日を期間に算入して)三箇月以内に提起しなければならないとしているが、右の「裁決があったことを知った日」とは、裁決の存在を現実に知った日を指すものと解される。

しかるに、前記のとおり、原告が本件訴訟を提起したのは、右送達日から起算して三箇月を経過した後である平成四年八月一九日であり、本件においては、本案前の問題として、本件訴訟について出訴期間が遵守されているか否か、すなわち、原告代表者が本件裁決の存在を現実に知った日が同年五月二〇日以後であったか、同月一九日以前であったかが争われている。

第三争点に対する判断

一  前記のとおり、本件裁決書謄本は平成四年五月一八日に原告の所在地に送達されているのであるから、特段の事情がない限り、原告代表者はこの日に本件裁決の存在を現実に知ったものと推認することができる。

二  これに対し、原告は、原告代表者は糖尿病の療養のため平成四年五月一六日から同月一九日まで欠勤しており、同月二〇日に出勤した際に初めて裁決の存在を現実に知ったと主張している。そして、原告代表者は、本人尋問において、そのころ長野県小県郡長門町の実家へ、糖尿病の療養を兼ねて父親の病気の見舞いのため帰省した旨を供述しており、甲一号証(藤掛昌彦作成の「遅延理由書」と題する書面)にも、一部この供述と符合する記載がある。また、甲三号証及び甲四号証によれば、原告代表者が糖尿病であったことが認められる。

しかし、同人が長野県に帰省していたことを裏付ける客観的な証拠はなく、したがって、同人が右主張の期間に帰省していたことも確認することはできない。その上、同人自身、右主張とは裏腹に、本件尋問において、右の帰省の正確な期間は記憶していない旨を供述しているのである。

これらの点にかんがみると、原告代表者が裁決書謄本の送達の前後に帰省していたということも事実かどうか疑わしいし、仮にそのころ帰省していたとしても、その期間が原告の主張するとおり平成四年五月一六日から同月一九日までであったと認めることは到底できない。すなわち、本件においては、前記一の推認を覆すに足りる特段の事情があることは認めることはできないものといわざるを得ない。

三  したがって、原告が本件裁決があったことを知ったのは、平成四年五月一八日ということとなり、本件訴えは、出訴期間を徒過した不適法なものであるから、主文のとおりいずれも却下すべきこととなる。

(裁判長裁判官 秋山壽延 裁判官 原啓一郎 裁判官 近田正晴)

別表一

昭和六一年六月一日から同六二年五月三一日までの事業年度の本件処分等の経緯

〈省略〉

別表二

昭和六二年六月一日から同六三年五月三一日までの事業年度の本件処分等の経緯

〈省略〉

別表三

昭和六三年六月一日から平成元年五月三一日までの事業年度の本件処分等の経緯

〈省略〉

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